イタリアンアルティメットダークネス日記

おませな小学四年生たちが綴るわいわいブログ

ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア『たったひとつの冴えたやりかた』 紹介編

 どうも、たけです。

 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア作のSF小説『たったひとつの冴えたやり方』(ハヤカワ文庫SF)の紹介編です。感想編はこちら。

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概要

 最近むるに到来した空前のSFブームによって学級文庫入りした本です。原題は”The Starry Rift”で、3つの連作中編「たったひとつの冴えたやりかた」「グッドナイト、スイートハーツ」「衝突」が収録されているSFの名作です。それぞれ1985~1986年に発表されました。wikipediaによると表題作の「たったひとつの冴えたやりかた」はローカス賞 ノヴェラ部門(1986年)、第19回星雲賞海外部門(短編)(1989年)、S-Fマガジン創刊700号記念 2014オールタイム・ベストSF 海外短篇部門ベスト50 3位(2014年) に選ばれています。ある書評家は「この小説を読み終わる前にハンカチがほしくならなかったら、あなたは人間ではない」とまで述べたそう。

 この3つの連作物語は、間に挿入された「デネブ大学の中央大図書館にて」という書下ろしによって緩やかに接続されています。若いコメノ(というエイリアンの一種)のカップルの「"雰囲気をつかみたいので" 連邦草創期のヒューマンのファクト/フィクションを何か選んでもらえないか」というリクエストに応えるべくベテラン司書が選んだ3つの物語です。全て宇宙連邦政府の辺境基地である連邦基地九〇〇とその先にある<リフト>という星々の密度が極端に薄い未開の地帯を舞台としています。

 

 それでは、いくつかオススメポイントを挙げて紹介していきましょう(僕のSF経験が最低レベルのため、SFではよくありそうなことについても新鮮なリアクションをしています)。

オススメポイント1 ヒューマン

 この世界では「ヒューマン」は一つの種族として描かれており、他の知的生命体もたくさん登場します。他のエイリアンたちの描写はSF的ワクワクをそそるもので、その姿形や不思議な生態について想像をかきたててくれます。しかし、この物語を読んで強く感じるのは、エイリアンの魅力というよりもそんなエイリアン達と比較することで見えてくるヒューマニズムです。エイリアンの目を通してヒューマンを見たり比較することで、当たり前だと思っていたことが実はヒューマンならではの特性であるかもと気づかされたり、宇宙旅行が可能になり現代とは全く異なる世界でも同様に躍動するヒューマニズムによって人間というものを再確認できたりします。非人間を通した人間賛歌です。

 登場するヒューマンもエイリアンも魅力的なキャラクターが多く、それが物語の魅力の大半を占めています。とりわけ、この作者は「優秀なヒューマン」が好きなようです。宇宙の辺境で美しくも寂しい広大な<リフト>の中で勇敢かつ見事に立ち振る舞うヒューマンたちの活躍と、優秀な中に匂う人間臭さの魅力にあふれた作品です。

 

オススメポイント2 SF的アイテム

 この物語では「冷凍睡眠カプセル」「メッセージパイプ」といったアイテムが重要な役割を担います。長距離宇宙航行に必要なものであったり、<リフト>での電波がかき乱される現象によって必要になるものだったりします。こういったアイテムを登場人物たちがいかに使いこなすかが魅力の一つです。

 さらに、宇宙の広大さがゆえに、こういったアイテムを駆使する際に生じる「時間差」が演出上物語の魅力をぐっと引き上げています。例えば「問題がある」という報告が届いたときには現場ではもうその問題の結果が出ていてこちらでは何もできないというもどかしさなどが臨場感をもって描かれ、いいスパイスとなっています。

 また、物語が執筆された時代を反映するものと思いますが、これら未来のアイテムが持つ「ローテク感」にも魅力を感じます。例えばはるか未来の話であるのに、情報の記録に映像ではなく音声を使っていることや、頻繁に「カセット」を交換していることなどがその「ローテク」に当たります。これらは現在のテクノロジーから見ると違和感がある一方で、「執筆当時から見た未来」を追体験しているような愛おしさを感じました。

小学4年生たちの感想

たけ ☆3.5

 おもしろかったです。SF経験が乏しいのもあって、SF的楽しさは新鮮ではありましたが、なんとなく既知のおもしろさの中で上質でしたという感じ。2つ目の「グッドナイト、スイートハーツ」については☆4.0!

むる ☆4.0

  SFの面白さが色々と詰まっている上に読みやすく、SFビギナーの一冊目におすすめします。これを読んで「たったひとつの冴えたやり方」というフレーズを使っていきましょう。

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 (『バーナード嬢曰く。』第4巻より)

 

 以上、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア作のSF小説たったひとつの冴えたやりかた』の紹介編でした。感想編に続きます。

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