イタリアンアルティメットダークネス日記

おませな小学四年生たちが綴るわいわいブログ

「パターンアンホワイト」を書いて/読んで

 昨日更新したざわ作のオリジナルSFショートショート小説「パターンアンホワイト」を書いた人と読んだ人の所感です。

shogakuyonensei.hatenadiary.com

 

あとがき

ざわです。皆さんがパターンアンホワイトを読んでくれた5〜10分を楽しいものに出来たなら嬉しいです。

 

さて、僕がSFを書いた動機は、テッドチャンの「あなたの人生の物語」と藤子・F・不二雄のSF短編集を読んだことによって生じました。この二作品は本当に良いのでそのうちクラスメイトのたけとむるが紹介してくれると思います。仮にも理系小学生で科学に親しんだからには少なくとも一つはSFが書けないとかっこ悪いなと感じました。それで一つ書いてみたんです。いやでも難しいですね。設定に細かい穴があったりや一貫性が欠けたり、一方を修正すればもう一方が破綻したり。今回の作品にも細かい(もしかしたら細かくないかも)穴があると思いますが、皆さんの頭の中で埋め合わせてもらえると助かります。文章や設定力を上げるので、その時を楽しみにしてて下さい。

 

今回の作品の着想は小学校に公演に来た、ライオンが自動餌生成装置を手に入れ、それに頼り切った末に狩りの能力失う劇、機械学習に質の悪いデータを用いても質の悪い予想しか出来ないという夏休みの自由研究での教訓、ネットで見かけた「フォルカスの倫理的な死」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054881239629/episodes/1177354054881239634)を読んだ感想が悪魔合体して出来た作品です。

 

タイトルのパターンアンホワイトとは、直訳すれば「白ではない型」という意味になります。ホワイトノイズというのが規則性のない雑音を指すことから、規則性のある雑音という意味になります。だから、僕の中のではみんなもこの音声記録を聞き取れてないという設定です。(ノイズアンホワイトの方が良かったかな?でも読み終わった後にタイトル見てちょっと感心させたかったからネタバレ的なタイトルに出来なかった)。

研究をしているとノイズの中に意味を見出そうとする失敗をすることがあるのですが、ノイズと思われるものの中に何かメッセージがあって欲しいなという願いも込めてます。

皆さんも模様や音の中のノイズを見るたびに本当は規則があるのかもとか遊んでみて下さい。

さようなら。

 

小学四年生の感想

むる

  ざわ文学第一作。ざわが最近SFを書いていたのは知っていたが、思っていたより本格的だったので驚いた。まず読んで、これはテッド・チャンの影響を受けているなと思った。ざわが「あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)が好きなのは知っていたので、なるほど、と。外国人とのディスコミュニケーションは我々も経験する日常的な出来事だろうし、エイリアンとのファーストコンタクトと、そこからなんとかコミュニケーションを取ろうとする話はSFでは珍しくもない。ただ、この作品では、言語の壁が対立を生んでいたというところから、同言語でのコミュニケーションでも翻訳機を通すことで、対立がなくなっていく展開になっているのがおもしろい。そもそも我々はTwitterでの議論などを見るまでもなく、言語を共有しているからといってそこに持たせた意味までも正確に共有できているわけではないし、同じ言語を喋っているからといって、本当に同じ「言葉」を喋っているのかどうかは疑わしいということは、日常的に経験している。そうした、一見成立しているかのように見えるコミュニケーションの裏にあるディスコミュニケーションを描こうとしたのがこの作品のポイントだろう。最終的には、あらゆる言葉があらゆる意味を網羅した結果、言葉が意味を失う。言語とは限定的なものであり、その不自由さゆえにコミュニケーションが可能であるという逆説を示している。もちろん表現には向上の余地があるだろうし、隅をつつけば設定の甘いところも出てくるかもしれないが、アイデアのおもしろさはそれらを十分にカバーしているように思う。孤独とコミュニケーションという、ざわらしさがよく表れた作品。いつもディスコミュニケーションを繰り返してるだけあるな。次回作にも期待しています。

 

 たけ

 ざわポエムは何度か読んだことがありましたが、ざわ小説は初めてでした。読んでみるとちゃんとハードSFでおもしろくて感心しました。文章力の物足りなさや設定の粗なんかが目につきはしますが、そこはあまり気にせずアイデアや目指すもののおもしろさを十分楽しむことができました。「あなたの人生の物語」を読んでSFを書きたくなるというのはよくわかります。理系小学生として、科学の原理や概念というのをあれほど見事に適用して物語に昇華させることには憧れを抱きます。今回のざわSFでは機械学習を軸に言語について考察するような内容で、同じ香りが漂っていますね。

 AIが仕事を奪うだとか、ロボットが人間に反逆するだとか、そういうよくあるディストピアではなく、機械翻訳の発展の先にあるディストピアを考えたのは新鮮でいいアイデアだと思います。同時に「同一言語話者でも実際は各個人特有の言語を話していると言える」という皮肉や、「機械翻訳の究極版はそれすらカバーすることになる」という考えもおもしろい。機械翻訳によってある意味で言語を統一し、発展が加速した人類が、その結果言語をバラバラにされ崩壊するという展開は「未来版バベルの塔」というかなりきれいなオマージュになっているところが美しく、超高得点。