イタリアンアルティメットダークネス日記

おませな小学四年生たちが綴るわいわいブログ

ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』 紹介編

 どうも、たけです。

 ダニエル・キイス作のSF小説アルジャーノンに花束を』(ハヤカワ文庫NV)の紹介編です。感想編は明日更新します。

 

 

概要

 アメリカ合衆国の作家ダニエル・キイスによる現代社会を舞台にしたSF小説。中編小説として発表されたものがヒューゴー賞を、後に長編化されたものがネビュラ賞を受賞しています。SFですが舞台は未来や宇宙というわけではなく、現代社会においてある特殊な手術が行われたことから始まる物語です。その手術の特殊っぷりがこの小説をSFたらしめています。

 主人公は知的障害者の32才男性、チャーリイです。チャーリイは子どものような知能と心を持った明るくやさしい青年で、パン屋で働きながら楽しく暮らしています。そんなチャーリイが大学の最新研究成果を用いた手術を受けることになり、その経過をチャーリイ自身が綴った経過報告書として描かれた作品です。そして、その手術というのは「頭がよくなる手術」です。

 手術による変貌に伴い、チャーリイにとって世界は、人々はどのように変わるのか。また変わらないものは何か。知能の変化と一筋縄にはいかない心、彼自身と周囲の人々の人間性を描いた、幸せとは何かを考えさせられる作品です。

オススメポイント1 文体に表れるチャーリーの変化

 先にも述べたように、この物語は主人公チャーリイ自身が書く経過報告書として語られます。なので全てがチャーリイの言葉であり、チャーリイに起こる様々な変化が文体に現れてきます。最初は知的障害者のチャーリイなりに誤字だらけの拙い文章になっていて、なんなら読みにくさと戦う必要があるのですが、それが徐々に、そして露骨に変化するのは体験的なおもしろさがあります。訳者の技量も問われてます。

オススメポイント2 知能の成長と心の成長

 主題の一つだと思います。手術によって急成長を遂げる知能と、そう簡単に成長しない心と。特殊なものを描くことによって、それと比較して特殊でないものに注目するという描き方はよくあると思いますが、この物語も急成長する知能と比較することで心の問題が強調して描かれます。超人的な部分と普通の部分とまだまだ足りない部分と、それらが共存するチャーリイに対し、目上の人に感心するような、同時に等身大で、でも親心も持って、という入り組んだ視点で感情移入することでしょう。

オススメポイント3 あなたはどう思いましたか?

 この物語はチャーリイ目線で描かれているため、読者はその目線に憑依してチャーリイから見える世界が変化していく様子を体験することができます。その中で、チャーリイの変化に直面した人々が、彼に対してどのような態度を示すのか。やさしさにほっこりすることもあれば残酷なこともある人間ドラマを生々しく体験できます。

 さて、「この物語はチャーリイ目線」と書きましたが、実はそれと同時に読者は「チャーリイの経過報告書」を読んでいる第三者でもあります。チャーリイ目線で世界を見ると同時に、第三者目線からチャーリイの経過を観察しているのです。チャーリイの変化を目の当たりにしたあなた自身が、彼にどういう印象を抱いのか。彼にどうあってほしいと思うのか。そこに耳を澄ませてみるとおもしろいかもしれません。

小学4年生たちの感想

たけ ☆3.0

 文体が変わっていくことについては、こんな露骨なのは初めてだったのでおもしろかったです。「人生」という感じの物語が好きなので、一部始終が語られるのは満足感がありました。SF、知的障害者の話、青春、家族関係、人間心理など、要素盛りたくさんでした。読みやすかったですし、「いい話を読んだな」「読んでよかったな」という爽やかな印象はあります。特別感銘を受けたというほどではないですが、有名ですし、十分おすすめです。

むる ☆3.0

 主人公チャーリィの知能とそれに伴う内面の変化を一人称視点を巧みに描いている。有名作品なので読んでおいて損はないです。

 

 以上、ダニエル・キイスアルジャーノンに花束を』の紹介編でした。明日更新の感想編に続きます。