イタリアンアルティメットダークネス日記

おませな小学四年生たちが綴るわいわいブログ

未来世紀サクライ第78回 分析&感想

 どうも、たけです。

 世界的な人気を誇るPodcast番組「未来世紀サクライ」の第78回では、ハン対バボの編集対決企画が勃発し、各地で話題となっています。うちの小学校も大盛り上がりです。この有名番組の紹介は(書くまでもないけれど)いずれ改めて書くとして、今回は2つの第78回を聞いて気づいたことと感想を述べたいと思います。

miraiseiki.com

 

はじめに

 この番組に対する態度として、僕はただ彼らの為すことを応援するだけというスタンスです。その自意識もあって、「早く更新してほしい」と思うよりは「お任せします」と思っています。しかしながら、「バボ版第78回」におけるシブヤ氏の「(実験的にそれぞれが編集やってみて) ヘビーリスナーの人に違いとか聞いて 」という発言をきっかけに、ヘビーリスナーを自負する僕 Got My Pen。以前からバボ氏の編集スキルの変化も気にして聞いていた者として、僭越ながら分析と感想を述べます。

 

編集対決概要

 バボ版前半に経緯の説明があります。収録音源を渡したにも関わらずバボ氏が編集をさぼっている(しかし「テラスハウス」は5周している)状況にハン氏が憤って小競り合いに発展。ハン氏は当初「ひそかに収録した音源をバボに渡さず自分で編集して勝手に配信する」というクーデターを企てました。これを実行しかける途中、ことを穏便に運びたいジン氏、シブヤ氏によりなだめられます。そうはいってもここまで盛り上がった気持ちのやり場は必要です。そこで、「同一音源をハン、バボがそれぞれ編集してリスナーの反応を見る」という実験的な「編集対決企画」が持ち上がりました。一つの衝突から不満が高まり、ラジオチーム崩壊を意に介さずクーデターを企むハン氏と、それをなだめて穏便に済まそうとするジン氏シブヤ氏、そして後に設けられるであろう仲直りのための席、なんだか既視感があります。そう、彼ら自身が「テラスハウス」をやって見せてくれているのです。バボ氏は6周目になりますね。

 最終的に、下記公式ツイートにあるように第78回~第80回は同じ音源をもとにハン氏、バボ氏がそれぞれ編集した2バージョンずつがアップされるということです。3回分は長ぇ。ヘビーリスナーとしては少なくとも各2回ずつは聞くことになるので大忙しです。

  そもそもハン氏はバボ氏の編集技術の高さは認めており、憤怒は「取り組むのが遅いこと」に対するものです。なので編集の質を比較する形式で行われているように見えるこの企画は、配信速度を問題としたハン氏によるクーデター計画とはもはや別の企画という認識です。「自分が編集して出すので十分いける」と主張するハン氏と、これまで培ってきた技術と経験を持つバボ氏のプライドを賭けた対決企画と言っていいでしょう。リスナーとしては、ボクシング対決に続きハン氏が器用さを見せつけるのか、それとも自分の土俵でバボ氏がリベンジを果たすのか、注目の一戦です。

 

 それでは、ここから具体的な編集結果の差について分析していきます。もちろんぼくには元の収録音源を知りようがないため、たくさんの憶測に基づいています。

 

構成の比較

状況説明の有無

 まず大きな構成の違いとして、バボ版では最初に今回の編集論争についての話が約40分間も入ります。一方ハン版ではその話はなく、英語の勉強の話から始まり、最後に憤っていることについて軽く触れるだけです。内容から推測するに、おそらく収録音源の時系列は以下のようになっています。

  1. 英語の勉強の話(タイトルコール含む)
  2. いろいろ
  3. ハン氏が憤っている話(この流れで一本目終了)
  4. 編集論争詳細(タイトルコール含む)

この順番であることは4の中でネットワーク理論の話を踏まえたコメントをシブヤ氏がしていることから推測されます。また、4の冒頭でジン氏が「それで(そのことで)ちょっと宣言しとこうや、ハン」と言っていますが、これは3の部分で説明が半端だったことを受けてのことと考えられます。

 ハン版では3直前でハン氏が「この辺で終わっとこう、編集しやすいし笑」という旨のことを意味深に言っており、ジングル後にはハン「今日どうやった?」ジン「不自然やな~」というやり取りがあります。このノリというのは、ハン氏がクーデター計画通りに「普通に収録して勝手にアップする」つもりだったために収録中はクーデターについては言及しておらず、企みを隠しているノリなのだと考えられます。本気でクーデターやる気だったんですね。それを見かねたジン氏がこの流れから「ハン怒ってるからな、けっこう」と言ってこの話題に切り込み、それが3、4に繋がったと推測しています。

 この素材を用いて、ハン版は1~3の流れで構成され、バボ版では4から始まった後に1~3という流れです。つまり、バボ版では収録音源と順番を入れ替えることで最初に状況説明を入れています。バボ版の構成は、3回分続く大きな企画であることを考えると説明的でかなり親切だと思います。一方でハン版の構成は時系列通りであり臨場感がありますし、後から背景が明かされる伏線的構造であるとも言えます。大きく改変しないシンプルな編集であることは、早く出すことをモットーとしたハン氏の宣言通りです。そもそもハン氏は企画としてやるつもりがなかったことを考えると、あえて説明しないことで「まずは企画は抜きにして素直な感想を聞かせてほしい」という意図があったという解釈も可能です。が、おそらくただ素朴に時系列通りに並べただけでしょう。

 今回の企画は3本分行われるとのことです。収録は2本取りのはずが盛り上がって3本撮りになったということなのか、2本取り+バボ氏を交えてスカイプでもう1本みたいなことなのかはまだわかりません。ともかく、バボ氏は1に含まれるタイトルコールをカットして、4のタイトルコールをこの回で使用しています。今後タイトルコールの音源が足りるのかやや心配なところです。

大幅なカット

 ハン版はおそらく大きなカットなく音源を使っています。これは宣言通りです。一方、これと比較することでバボ氏がいかに大きくカットしているかがリスナーに提示されることになりました。バボ版では冒頭に40分の状況説明が入っていますが、その後はハン版と同じ素材をすべて使いきっています。全体の時間は同程度なので(同程度にするために?)単純に考えてハン版から40分分をカットしていることになります。一番大きくカットされたのは英語勉強の話です。ハン版では28分ほどあるこの一連の話を、中盤を大きく抜いて7分半にしています。また「家族の話~シブヤ氏落ち込んだ話~ジン父の話」の一連の部分がハン版では22分あったのに対し、バボ版では13分になっています。この部分からもエピソードをいくつか抜いています。

 この差に関してどちらが良いかというのは好み次第のように思います。やはりバボ版のように細かくエピソードを選りすぐったものは聞きやすいですし密度は高くなります。テンポ良く展開していくのはやはりリスナーにとって満足度高まることでしょう。一方、ハン版では細かなカットがなく多少だらだらしているところもありますが、その雰囲気込みで雑談ラジオを楽しむことができます。僕のように「もし5時間あるなら普通に5時間聞く」というタイプであれば全く問題ありませんし、むしろ「質とかいいから量をくれ」という気持ちがあったりします。今回のハン版は短い沈黙が流れるシーンなどちょいちょいあり、初期のミラサクの感じがありました。それはそれでよかったです。

細かな違い

音楽の使い方

 バボ版では従来通り、といった感じです。ハン版ではまず音楽から開始し、途中でも話題が不連続に切り替わるところでジングルを入れています(ジングルがそのまましばらくBGMになる)。プロのラジオではジングルやBGMが時間帯やコーナーで決まっていることが多いので、ハン氏が今後BGMにどの程度意味を持たせるつもりなのか気になります。一方、バボ氏は話題が不連続に切り替わる場合にもジングルなしのまま同じ流れで突入することがあるので、それよりはやさしい編集になっていると言えるでしょう。

 ハン版では明らかな減点箇所があります。ハン版では96分27秒あたりからエンディングBGMのようなものが流れますが、これの音量が大きすぎます。そしてラスト52秒でこのBGMが一度切れ,ハン氏の「今日はこの辺で」をきっかけにまた流れ始めます。これは明らかにおかしな流れです。おそらく、一度切れる前の部分のBGMは本来消すはずだったもので、ミスで残ってしまったと思われます。「今日はこの辺で」からのBGMだけが本来意図したエンディング音楽でしょう。ちなみに編集ミスといえば、第74回がアップされた直後はオープニングだけでなく全編にエコーがかかっていたというミスがあったことに皆さんお気づきでしたか?もちろんお気づきでしたよね。

小さなカット

 普通に聞いていて気付いただけでも、バボ版ではいくつか細やかなカットが施されています。例えば「シブヤくんが落ち込んだ原因があるがまだ言えない」の部分をカット、また、ジン「読書会の話していい?」ハン「次にしよ」という部分がカットされています。これらは何らか共通の基準でカットされたものにも思えます。こういった話は悪く言えば「ノイズ」になります。予告といえば予告ですが、気になるだけで本題をサポートしませんし、経験上ちゃんと回収される期待も薄いです。こうしたノイズをカットすることは、エピソードの量を減らすわけでもないですし、本題を引き立てる効果があるテクニックと言えそうです。

  こうした細かいカットは、単純に極小エピソード単位で切っているのが基本だと思いますが、気づいてないだけでセリフ単位のカットもあるかもしれません。Youtuber動画を初めて見た時、全ての間を詰めたようなハイテンポな構成に驚きましたが、そういう密度増加加工というのは聞きやすさにおいて大事なのかもしれません。

友人の妹の名前

 「家族」の話題中、ハン版ではシブヤ君が友人の妹の名前○○を挙げて「○○が。あ、妹が。」と言いなおしている箇所があります。これがバボ版では「○○が」の部分をカットしてスムーズに繋がれ、「妹が。」とだけ言ったことになっています。今まで番組ではその子の名前は出ていませんでしたし、シブヤ氏がわざわざ言い直したことを踏まえるとカットすべき部分のようにも思いますので、バボ氏の細かな配慮が光っています。今回ハン氏から「8割の完成度でもいい」といった編集の完成度の話が出ていましたが、編集の完成度というのは必ずしも「おもしろさ」に関するものだけではないのだなと思いました。こうした配慮は今回のように二つの編集を比較しなければ気づきようがないので、これまでもきっとこういう工夫はされてきたのだと思います。

タイトル

 今回、ハン版のタイトルは「第78回 英語/家族/ネットワーク理論/誤読」とタイトルに4つのトピックを掲載しています。従来のバボ氏によるタイトルでは2つのトピックでした。これはハン氏がバボ版前半において「トピックごとに小分けにして配信してもいいのでは」という旨を述べていたことと関連するかもしれません。ハン氏的には単体で配信しうる4つトピックの集合体として一つのエピソードが構成されているという認識の表明に思えます。

エピソードメモ

 Podcastでは各エピソードの詳細を記述することができます。今回のハン版ではエピソード中に登場したキーワードが時系列に羅列されています(バボ版では淡々と企画説明が行われています)。この方式は未来世紀サクライでは第21回~第57回のほとんどと、他の回でもちらほら行われています。それ以前はバボ氏が話者とトークタイトルを並べていました。例えば第13回では下記のようになっています。

ハンくん「一人暮らしをやめて実家に」

シブヤくん「おばあちゃんにお小遣いをもらう.額は何と...」

ジンくん「シブヤくんのよくわからない行動」

(後略)

 サザエさんっぽいですね。キーワード羅列方式が定着する直前の第20回でエピソードタイトルのセンスに苦情が出ていたので、その流れでメンバーのリクエストによりメモ欄もキーワード羅列方式に変更されたのではないかと推測しています。ちなみにハン氏が好きな「東京ポッド許可局」という番組のエピソードメモ欄がキーワード羅列方式です。
 「話者&トークタイトル方式」はトークテーマ一つ一つにある程度まとまりを意識しており、作品意識が強い場合に相性が良い気がします。一方、「キーワード羅列方式」は各トピックのまとまりというよりは脱線なども含め出てきた個々の言葉を愛でているため、「雑談ラジオ」の意識が強いのではないかと思います。少し強引な紐付けですが、「話者&トークタイトル方式」が作品意識が強いバボ好み、「キーワード羅列方式」が雑談ラジオ趣向のハン好みだと仮定すると、大胆にカットして質にこだわるバボ編集と、あまりカットせずのんびりした場面も使うハン編集の特徴がエピソードメモにも表れていると言えそうです。あるいは、おなじく第20回で「後から内容を思い出すのに便利なのが理想」と言っていた気がするので、単にキーワード羅列方式が便利というだけかもしれません。

 

感想

編集について

 古い回については最初「変なところでジングルが入るな」と思って聞いていましたが、何度か聞いているうちに(何度も聞いています)、それが途中に入った脱線話をカットした痕跡を隠すためということに気が付き、いろいろ試行錯誤があるのだなと思いました。そもそも僕自身が編集や演出に興味があることもあり、素人ポッドキャストの聞き方として編集にも注意を傾けがちでした。当時のバボ氏の仕事(テレビのクリエイティブなところ以外全部)の影響もあってなのか、第70回「神バイト/大学院の授業」の回で明らかにレベルアップしたキレッキレの編集がなされており、高密度な仕上がりに驚いたのを覚えています。「初めて聞く人にオススメするならこの回だな」というのが更新されました。もちろん釣り部との対決がおもしろすぎるのも大きいですが。

 今回ハン氏の編集は宣言通りにほどほどの完成度を目指して行われているように見えました。雑談ラジオ好きにとってこれで十分いけてるというのはおっしゃる通りです。そういった編集の質とは別のポイントとして、ハン氏の「おれ編集するで!」というテンションが4月になって就職した後にも継続するのかどうか注目したいです。

 そういえば、プロのラジオってどのくらい編集しているんでしょうか。僕は主に深夜ラジオを聞いており、その中には録音放送のものもあります。しかし、それらは深夜に生放送が大変だから録音にしているといった感じで、やばい話をしない限りは生放送と同じように時間を計ってCMを入れて収録しているように聞こえます。あれってがっつり編集してるんですかね?もし、がっつり編集が必要なのは素人だからこそなのであれば、編集に対する工夫も含めて楽しむのはPodcastならではのことかもしれません。そんなわけで、今回の企画は実に僕好みで大変楽しめております。

率直な感想

 ここまでは編集の違いについて分析してきましたが、大事なのはその結果番組がおもしろかったかどうかでしょう。おもしろかったかどうか?ええ、めちゃくちゃおもしろかったです。未来世紀サクライにはいろんなタイプの良さがありますが、今回ハン版バボ版両編合わせて各種盛りだくさんでした。中でも印象的だったのはイーロンマスクとホリエモンに対する東浩紀の批評の話におけるジン氏のセリフ「最短行動するアルジャーノンが走った経路が迷路の構造やん」です。これは未来世紀サクライ史に残るパンチラインであり、小学四年生たちはぶち上がりました。あ、アルジャーノンについてはこちらの記事をご覧ください。

 

それでは。