イタリアンアルティメットダークネス日記

おませな小学四年生たちが綴るわいわいブログ

「パラサイト 半地下の家族」感想

 どうも、たけです。カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した話題の映画「パラサイト 半地下の家族」を見てきました。その感想です。

 

全体的に

 かなりおもしろかったです。めちゃくちゃ完成度の高いエンタメ映画だと思いました。エンタメ成分の五角形がコーンフレークの栄養素のそれくらい大きかったです。コメディ、サスペンス、社会、家族、ホラーなど、いろんな要素をよくもまあこれだけバランス良くまとめたなと。ところどころで社会問題っぽいことを描きつつ、全体としてはごりごりのエンタメどたばた劇で、最初から最後までずっとおもしろかったです。コミカルな場面でもどこかシリアス(不穏)で、シリアスな場面でもどこかコミカル。全体的にわかりやすくて、わかりやすいからこそ「この感じね」と身構えていたところをさらに超えてくる感じに、グッときました。

 

以下、見た人向けのネタバレ感想です。

 

半地下

 「半地下」というのは大きなキーワードで、これが絶妙でしたね。半地下の哀愁みたいなものに慣れてきたところで「全地下」が登場してめちゃめちゃやばいやつらだったときはしびれました。半地下というのは日光が入ってきます。だから主人公一家は上を目指してしまうし、上流階級との差に食らいもする。一方で、全地下夫婦は完全に地下になじんでいて、地上の人たちに対する目線は天上人に対する崇拝であり、贅沢を望まずつつましく地下に落ち着いています。中途半端に日光が入ること、これが半地下の残酷さであり、それらを「洪水」という半地下に刺さる災害でも示したのはあっぱれです。全地下にまでなると核シェルターなので対災害では絶対安全というのも皮肉ですね(しかし食糧は完全パラサイト)。

 

あくまでエンタメ

 全体的に、めちゃめちゃエンタメだな~と思いました。なんというか、主人公家族は4人ともそれなりに能力が高いんですよね。悪知恵が働いて、器用に連携していろんなことをこなしてる。ところどころでお父さんがポンコツな感じは出しつつも、結局は高級運転手の役をギリ成立させられるくらいには器用だし。その能力があれば普通に仕事できるやろ、と。そういうところであまり同情心がわかないというか、だからこそ「におい」というキーワードによって地下っぷりを示しているところがある(能力面での地下っぷりに説得力がない)。自覚のないにおいというのは残酷だなと思いつつ、引っ越したら消えそうやなとも思いつつ。

 一方で、結果的に彼らは「計画」の部分には問題があったということになりました。演技の練習したり入念に準備して成功してたあれはなんやってん、というような無鉄砲さ。こういう展開というか、この失敗の流れは「調子に乗って、案の定失敗する」というもので、これは型としては「のび太」的な失敗であって、実に王道でした。「調子に乗ってないのに失敗する」というストーリーの方がよっぽどしんどい。そう思って上流、半地下、全地下の三世帯を見ると、上流と全地下は相応に現状維持的な生活を営んでいて、それを半地下家族に破壊されました。彼らからすればすさまじく理不尽な悲劇ですね。半地下家族の加害がすごいです。まぁ、それも「半地下から抜け出そうとするとそういうことになるんだぞ!(だから相応の生き方をしておけ!)」てきな理を描いているのだと捉えれば切なさがありますが。

 

良い人たち

 本作品では明確な悪人がいないというか、金持ち側の人たちも絶妙に良い人だったように思います。「金持ちだからやさしい」というセリフは印象的だったものの、ノリ全体がシンプルなルサンチマンというわけではなかったですね。また、どういうわけか家族の絆が絶対的でゆるがないところにはほっこりしました。そういうところもストレスなく見れるポイントだったように思います。

 一方で、妹は完全にすれきっていてエゴイストで、「わたしたちのことだけ心配してよ」というセリフにもあったように、他人を思いやる余裕がありません。遠慮がなく独尊的だから、邸宅のお風呂を優雅に使いこなせる。彼女が最後に死んでしまったのはそういう因果から来るものがあるんですかね。いいキャラだったので悲しかったです。

  

おわり

 ポイントを絞って感想を書きました。完成度が高くて、印象的なシーンやセリフも多く、細かいところまで気を遣われている。とてもよくできた映画でおもしろかったです。金持ちの弟の方、モールス信号解読しといてなんもせんのかい!(こういう予想の裏切り方がいい塩梅である)